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NextcloudのoccでOCP\HintExceptionが発生した

自鯖のNextcloudを23に更新し、occ db:add-missing-indicesを実行しようとしたらOCP\HintExceptionなる例外が発生した。

$ sudo -u www php /path/to/occ db:add-missing-indices
An unhandled exception has been thrown:
OCP\HintException: [0]: Memcache \OC\Memcache\APCu not available for local cache (Is the matching PHP module installed and enabled?)

occ単発で動かしても同様で、根本的に何かが悪いっぽい。

助けて~ぐーぐるせんせーってことで、ググったら公式にそれっぽいissueが上がっていた。

いわく、apc.enable_cli=1を付けて実行する必要があるとのこと。APCuを明示的に有効化する必要がある雰囲気?とりあえず言われたとおりにやってみる。

$ sudo -u www php --define apc.enable_cli=1 /path/to/nextcloud/occ db:add-missing-indices
Check indices of the share table.
(中略)
oc_properties table updated successfully.

無事動いた。

改めてNextcloudのマニュアルを見てみると、Memory cachingのAPCuのところにちゃんと書いてあった。

デフォルトではCLIからの実行時はAPCuが無効化されているそうで、明示的に有効化しなきゃならんとのこと。NextcloudのCronジョブにも影響するので、そっちの方も個別に対応するか、php.iniに先のapc.enable_cli=1を追加しておく必要がある。

なるほどなー、だから管理画面に「長期間バックグラウンドジョブが動いていないようです」メッセージが表示されてたのかー。

Special vdevが消失したプールとzpool -Fオプション

プールのメタデータを丸っと引き受けるというZFSのSpecial vdevの特性から、対応する物理デバイスの故障などでSpecial vdevが死ぬと、プールそのものが使えなくなりそうってのは容易に想像ができる。

実際どうなるか仮想マシンベースで確認してみると、やはり使えなくなった。それもzpool listの結果にプール自体が出てこなくなるという、割と重篤な扱い。プール名を指定 or プール探索でインポートしようとすると、以下のようになってインポートできない。

# zpool import -a -N
cannot import 'ztest': I/O error
        Destroy and re-create the pool from
        a backup source.

存在しないプールのインポートではcannot import 'znotexists': no such pool availableって感じなので、明らかに扱いが違う。

Special vdevが消失したプールの復旧は基本的に無理っぽい感じ。

一応man zpool-importを見てみると、(いつの間にか)プール回復に関するオプション-F, -X, -Tが追加されていた。それぞれの効果を抄訳してみた。

-F インポート不可能なプールのための回復モード。最後のわずかなトランザクションを破棄することで、プールがインポート可能状態への復帰を試みます。このオプションを使うことで、損傷を受けたすべてのプールが回復するとは限りません。成功した場合、破棄されたトランザクションに関連するデータは、回復不能なほどに失われます。プールがインポート可能またはインポート済みの場合、このオプションは無視されます。
-n 回復オプション(-F)と共に使用します。インポート不可能なプールが再びインポート可能になるかどうかを判定しますが、実際にプール回復は行いません。プール回復モードの詳細は、上記の-Fオプションをご覧ください。
-X 回復オプション(-F)と共に使用します。有効なtxgを見つけるための非常手段を取るか否かを指定します。これは、もはや一貫性が保証されていないtxgへ、プールがロールバックされることを許可します。矛盾したtxgでインポートされたプールは修復不能なチェックサムエラーを含むかもしれません。プール回復モードの詳細は、上記の-Fオプションをご覧ください。警告:このオプションはプールの健全性に対し極めて危険な可能性があり、最終手段として用いるべきです。
-T ロールバックに使用するtxgを指定します。暗黙的に-FXオプションを含みます。プール回復モードの詳細は、上記の-Xオプションをご覧ください。警告:このオプションはプールの健全性に対し極めて危険な可能性があり、最終手段として用いるべきです。

-F < -X < -Tの順で強力(危険)になる雰囲気。で、それぞれを指定して、先のSpecial vdevが無くなったプールのインポートを試みたのが以下。

# zpool import -F ztest
cannot import 'ztest': I/O error
        Destroy and re-create the pool from
        a backup source.

# zpool import -FX ztest
cannot import 'ztest': one or more devices is currently unavailable

# zpool import -T ztest
invalid txg value
usage:
        import [-d dir] [-D]
        import [-o mntopts] [-o property=value] ...
            [-d dir | -c cachefile] [-D] [-l] [-f] [-m] [-N] [-R root] [-F [-n]] -a
        import [-o mntopts] [-o property=value] ...
            [-d dir | -c cachefile] [-D] [-l] [-f] [-m] [-N] [-R root] [-F [-n]]
            [--rewind-to-checkpoint] <pool | id> [newpool]

-Tはtxgを指定してやらないとダメな予感。usageにもmanにもそれらしいことは書いてないんだけど…実際にどんな値を指定したらいいのか皆目見当もつかない。

その後、Special vdev用の仮想ディスクを戻してみると、問題なくプールのインポートができた。ただし自動インポートはされず、手動で行う必要があるようだ。(上記の-Fとかでプールを操作したためかもしれないが未確認。)scrubで健全性に問題がないことも確認。

そんなわけでSpecial vdevの冗長性には十分気を付ける必要がありそうだ。

ZFSのSpecial vdevを試してみる

階層化ストレージのZFS版ともいえるSpecial vdevとSpecial Allocation Classについて、1年程前に当サイトでも解説した。いつか試そうと思いつつ延び延びになっていたが、いよいよ導入の機運が高まってきたので簡単にテストした。

まずはコマンドの確認から。以下、da0p1をノーマルvdev(プール本体のストレージ)、da6p1をスペシャルvdevとする。

スペシャルvdev付きプールを作る。vdevタイプとしてspecialを指定し、その後にスペシャルvdevに割り当てるデバイスを指定する。

# zpool create -O atime=off ztest da0p1 special da6p1
$ zpool status ztest
  pool: ztest
 state: ONLINE
config:

        NAME        STATE     READ WRITE CKSUM
        ztest       ONLINE       0     0     0
          da0p1     ONLINE       0     0     0
        special
          da6p1     ONLINE       0     0     0

既存のプールにスペシャルvdevを追加する場合はzpool addで同様に指定する。

# zpool add ztest special da6p1

スペシャルvdevの削除。これはL2ARCやslogの削除なんかと一緒。

# sudo zpool remove ztest da6p1

OpenZFS 2.1.4の時点において、RAIDZプールに追加したスペシャルvdevは削除できないので注意!!(トップレベルvdev削除の制限事項)。

スペシャルvdevデバイスの増減(zpool attach/detach)は可能だが、いざzpool removeしようとするとinvalid config; all top-level vdevs must have the same sector size and not be raidz.エラーとなり削除できない。

slogやL2ARCは削除できるのにどうして……

ただし、remove後にスペシャルvdevからノーマルvdevへ、データの退避が行われる。

$ zpool status ztest
  pool: ztest
 state: ONLINE
remove: Evacuation of /dev/da6p1 in progress since Wed Feb 23 16:50:17 2022
    2.77G copied out of 13.5G at 142M/s, 20.54% done, 0h1m to go
config:

        NAME        STATE     READ WRITE CKSUM
        ztest       ONLINE       0     0     0
          da0p1     ONLINE       0     0     0
        special
          da6p1     ONLINE       0     0     0

$ zpool iostat -v ztest
              capacity     operations     bandwidth
pool        alloc   free   read  write   read  write
----------  -----  -----  -----  -----  -----  -----
ztest       14.4G  9.13T     16     68   215M   220M
  da0p1      932M  9.09T      0     68      0   220M
special         -      -      -      -      -      -
  da6p1     13.5G  36.0G     16      0   215M      0
----------  -----  -----  -----  -----  -----  -----

退避が完了するとプールからデバイスが除去される。

$ zpool status ztest
  pool: ztest
 state: ONLINE
remove: Removal of vdev 1 copied 13.5G in 0h1m, completed on Wed Feb 23 16:51:31 2022
    27.4K memory used for removed device mappings
config:

        NAME          STATE     READ WRITE CKSUM
        ztest         ONLINE       0     0     0
          da0p1       ONLINE       0     0     0

スペシャルvdevは標準でメタデータのみを格納する設定となっている。小ブロックデータの格納を有効にするには、ファイルシステム毎のプロパティspecial_small_blocksを0以外の2の冪数に設定する。

# zfs set special_small_blocks=64k ztest/R/pictures
$ zfs get -r special_small_blocks ztest
NAME              PROPERTY              VALUE                 SOURCE
ztest             special_small_blocks  0                     default
ztest/R           special_small_blocks  0                     default
ztest/R/pictures  special_small_blocks  64K                   local

スペシャルvdevが使われてるかどうかはzpool iostat -vで確認できる。書き込み中に見てみると、しっかりスペシャルvdevも使われていることがわかる。

              capacity     operations     bandwidth
pool        alloc   free   read  write   read  write
----------  -----  -----  -----  -----  -----  -----
ztest       11.7G  9.13T      0  1.36K      0   213M
  da0p1     11.4G  9.08T      0    215      0   207M
special         -      -      -      -      -      -
  da6p1      277M  49.2G      0  1.15K      0  6.22M
----------  -----  -----  -----  -----  -----  -----

スペシャルvdevの有無、special_small_blocksのサイズ、レコードサイズの違いで簡単にテストを行う。

  • テストデータ
    • 72208ファイル、10.3GiB(平均ファイルサイズ:150KiB)
    • Special vdevの効果が出やすいであろう、大量の小サイズの画像ファイル群
  • テストマシン
    • OS: FreeBSD 13.0-RELEASE-p6 on Proxmox VE 7.1
    • CPU: 4 vCPU (Xeon E5-2680v4. オーバーコミットなし)
    • RAM: 32GB
    • HDD:
      • コピー元: 単体 (仮想ディスク50GB/実態はU.2 SSD)
      • コピー先: 単体 (10TB 7200RPM SATA HDD×1)

コピー先のプールのスペシャルvdevの有無によって、以下の項目を測定する。

  • コピー元→コピー先へのファイルコピー所要時間(rsync -aX src dst/
  • コピー先でファイルの全走査にかかる時間(find dst > /dev/null
  • コピー先でファイルの全読込にかかる時間(find dst -print0 | xargs -0 cat

ARCの影響を避けるため、プールは都度作成し、rsync後はマシンを再起動する。その後、ファイル走査→全読込の順で実行する。

仮想マシン上での実行のため、結果にはノイズが多く含まれていることに注意。

recsize special_small_blocks コピー時間(秒) ファイル走査時間(秒) ファイル読込時間(秒) スペシャルvdev使用量(MiB) 備考
128k - 284 17.8 539 - Special vdevなし
0 281 2.5 493 319 メタデータのみSpecial vdevを利用
4k - - - 320 sdev容量のみ測定
8k - - - 321
16k - - - 322
32k - - - 336
64k 279 2.6 433 684
128k 280 2.8 203 13824 全データがSpecial vdevに行く
1M - 280 17.6 400 - Special vdevなし
0 285 2.5 358 34
4k - - - 35 sdev容量のみ測定
8k - - - 36
16k - - - 37
32k - - - 52
64k 274 2.7 352 400
128k 276 2.8 286 3102

※special_small_blocks=4k~32kは後から測定したため、スペシャルvdevの容量のみ。グラフには加えていない。1MBずつ増えてて本当かよ?と思ったが、再度試しても同じだったので間違ってるわけではなさそう。

スペシャルvdevの有無でファイルコピー(書き込み。赤線)時間に有意な差は見られなかった。ただし、これはコピー元の読み込みで律速してる可能性が否定できない。コピー先の書き込み状況をiostatを眺めてみると間欠動作となっていた。

ファイルの全走査はスペシャルvdevがあると劇的に高速化されるようだ。iostatを見てみると、スペシャルvdevで読み込み処理が走っており、SSD上のメタデータが使わているものと思われる。期待通りの挙動ですな。

ファイルの全読込も、スペシャルvdevに保存されているデータ量に応じて短縮されており、こちらも想定通り。recsize=128kでspecial_small_blocks=128kとすると、全データがスペシャルvdevに保存されるというのも期待通りの結果だった(special_small_blocksで指定されたサイズ以下のレコードのデータがスペシャルvdevに保存される仕様。)iostatを見てみると、見事に全てスペシャルvdevに書き込まれていることが分かる。

              capacity     operations     bandwidth
pool        alloc   free   read  write   read  write
----------  -----  -----  -----  -----  -----  -----
ztest       13.2G  9.13T      0  2.21K      0   236M
  da0p1         0  9.09T      0      3      0  15.2K
special         -      -      -      -      -      -
  da6p1     13.2G  36.3G      0  2.20K      0   235M
----------  -----  -----  -----  -----  -----  -----

少し意外だったのは、special_small_blocksが0、すなわちメタデータのみをスペシャルvdevに保存した場合でも、ファイル読込性能が向上したという点。今回は小さな大量のファイルが対象だったため、読込み処理におけるメタデータの処理割合が多かったのが要因だろう。

また、スペシャルvdevと直接は関係ないが、レコードサイズでメタデータサイズが大きく変化するというのは新たな発見だった。全くの推測だが、おそらくレコードごとに生成されるチェックサムの総量が影響しているのだろう。10.3GiBを128kiBレコードで割ると約84000レコードで、それぞれにfletcher4(4バイト)のチェックサムが付くと、合計330MiBとなる。同様に1MiBレコードでは41MiBとなり、これらはメタデータのみをスペシャルvdevに保存した際の容量とおおむね一致する。

さらに1MiBレコードではファイル読込が明らかに速くなっており、圧縮率の観点等も考慮すると積極的に128KiB以上のレコードサイズを使っていくのが良さそう。

special_small_blocksの設定をどうするかは悩ましいところ。扱うデータの種類やワークフローはもとより、TXG関連の設定やその時々の負荷量などで、書き込みがスペシャルvdev行きとなるかどうかが変わってくると思われ、見積もるのが難しい。今回は64k/128kの2パターンしか見なかったが、運用においては、より小さな設定値も検討に値するだろう。むしろ、とりあえず4kあたりから始めて様子を見るのがいいのかもしれない。 → 気になったので4k~32kを追試したけど、32k以下は殆ど効果がなさそう。スペシャルvdevの運用としては、容量が見積もりやすいメタデータのみとするか、ある程度余裕を持たせて64kで始めるの2択になるかも。

メタデータだけでもスペシャルvdevの効果は期待できそうなので、SSDに余裕があるならL2ARCよりも優先的に割り当てて良さそうに思う。

ZFS圧縮のLZ4とZStandardを簡易比較(zstdがよさげ)

ZFSerの皆様におかれましては、OpenZFS 2.0で圧縮アルゴリズムにZStandardが追加されたのは周知の事実だろう。compressionの値としてzstd-Nzstd-fast-Nが指定できるようになったが、設定値と圧縮率の関係性は以下のとおり。

(速度重視)←   設定値   →(圧縮重視)
zstd-fast-1000 ~ zstd-fast-1 / zstd-1 ~ zstd-19

zstdzstd-fastで数値の関係性が逆転しているように見えるが(というか設定値上はそういう風にしか見えないのだが)、zstd-fastの方は負数を表しており、-1000が最小でスーパー速度重視ということなので一貫性が取れている。

ZStandardはLZ4より圧縮率が高く、それに応じて処理負荷も若干高いとされている。実際のところどんなものか、簡易的にテストした。

個人的にアーカイブ用途に使いたいので、圧縮率重視ってことでzstdのみが対象。だいぶてきとーな実験なので、あくまで傾向を掴むもの程度で見て欲しい。

ZFSの主要開発者の1人、Allan Judeによる真っ当なベンチマークも参照されたし。

テスト環境は以下のとおり。

  • テストデータ
    • 12675ファイル、503GiB(平均ファイルサイズ:40.6MiB)
    • OS・アプリのISOイメージ、zip、インストーラexe、Macのdmg、appバンドルなど圧縮が効きにくいデータが多数
  • テストマシン
    • OS: FreeBSD 13.0-RELEASE-p6 on Proxmox VE 7.1
    • CPU: 4 vCPU (Xeon E5-2680v4. オーバーコミットなし)
    • RAM: 64GB
    • HDD:
      • コピー元: RAID-Z2 (16TB 7200RPM SATA HDD×5)
      • コピー先: 単体 (10TB 7200RPM SATA HDD×1)

テストデータをコピー元のRAID-Z2プールから、テスト用のコピー先プールにrsyncでコピーする。cpじゃなくてrsyncなのは、終了時に転送速度を表示してくれて便利だからってだけで、他意はない。

圧縮アルゴリズム別のファイルシステムを作ってはコピーしての繰り返しで、途中プールの作り直しやファイルシステム削除はしてないので、HDDの外周/内周の転送速度差がテストに影響していることに注意。

加えて、仮想マシン上での実行だったり、テスト中もファイルサーバとして普通にアクセスしたり(といっても負荷をかけないよう自粛はしたけど)と、結果には様々なノイズが混入している点にも注意。

各圧縮方法ごとの圧縮後容量、圧縮率(無圧縮時を100%とした時の割合)、転送速度を下表にまとめる。

パターン 圧縮方法 容量(GiB) 圧縮率(%) 速度(MiB/s) 備考
1 lz4 483.6 96.3 115.8
2 zstd-3 477.3 95.0 115.0 数値なしのzstdを指定した場合に使われる値
3 zstd-7 476.5 94.8 111.0
ここで2~3を削除
4 zstd-15 476.3 94.8 100.4
5 zstd-19 475.3 94.6 24.5
6 gzip-9 478.8 95.3 71.6
7 zstd-3 477.3 95.0 112.0 HDDの外周/内周の影響確認用
8 lz4 483.6 96.3 109.4
9 off 502.4 100.0 108.9 無圧縮。基準値

パターン1~3実行後、一応、HDDの内外周差を気にしてパターン1,2のデータは削除している。

パターン9が基準値。無圧縮で最内周に書き込んでいるので、これより遅いかどうかで、圧縮処理がボトルネックになっているかの目安になるかなと。書き込み先がHDD 1台のプールなので、そこで律速されてる感があるけど、まぁ実際の使われ方に近い環境ってことで大目に見てください。

グラフで表したのが下図。

まず言えることはzstd-3のバランスの良さ。LZ4と遜色ない速度にもかかわらず、圧縮率は有意に高い。さすが、compress=zstdとした時に使われるレベルだけある。gzip-9より縮むのに大分速いってのは特筆すべき。

圧縮率最重視のzstd-19が当然ながら最も縮むが、速度が大分厳しい感じ。少なくとも今回のテストデータでは、処理時間に見合うだけの効果が得られているとは言い難い。仮に最新CPUで速度が10倍になったとしても、250MB/s程度でボトルネックとなる可能性が高く使いどころが難しそう。費用対効果が高いのはzstd-7、状況によってはzstd-15もなくはないかな。

ついでに、圧縮はrecordsizeが大きいほど効果的とされているので、その影響も軽く測定。

LZ4とZStandardのそれぞれで、レコードサイズを512kから1Mに変更した時の圧縮後容量の差分を求めたのが下表。

圧縮方法 recsize 圧縮後容量(MiB) 128kとの差分(MiB) 無圧縮容量に占める削減割合
lz4 128k 495251.3 - -
512k 495145.0 -106.3 -0.02%
1M 495251.4 +0.1 +0.00%
zstd-7 128k 490354.9 - -
512k 488842.4 -1512.5 -0.29%
1M 487907.2 -2447.7 -0.48%

なぜかLZ4のレコードサイズ1MBの時は圧縮率が下がってるけど、概ねレコードサイズが大きくなるほど圧縮率も向上するようだ。割合で見ると微々たるものだが、レコードサイズを変えるだけで恩恵が得られるのはありがたい。実のところ、レコードサイズを大きくすると実データに占めるメタデータ割合(ハッシュの量)が減り、プール容量的にはこちらの影響の方が大きかったりする(参考:ZFSのSpecial vdevを試してみる

とりあえず、互換性を気にしなくていい環境では、lz4の代わりに積極的にzstdを使っていくのが良さそう。可能な限りrecordsizeも大きくしていこう(ただし、FreeBSDはレコードサイズが128k超のファイルシステムからブート出来ない点には注意が必要。)

Amazon.comでWD Elements 16TBを買ったらWD160EDGZだった

2021年末、Amazon.comでWD 16TB Elements Desktop (WDBWLG0160HBK-NESN)が289.99ドルになっていたので、5台購入した。12/23に注文し1/14に到着。クリスマスと年末年始(とコロナ?)のためか、いつもよりは到着まで時間を要した。一緒に買った物、輸入デポジットの返金を差っ引いて約1600ドル、クレカ明細を見たら1ドル117.163円とのことで合計187460円、1台あたり37500円となった。想定よりだいぶ高くついたな……円安が憎い……

当然(?)、外付けUSB HDDとして真っ当に使う気はさらさらないので、全領域ゼロフィルで動作確認が済んだところでご開帳~。なお、16TBを埋めるのに丸1日かかり、平均転送速度は180MB/s程となった。

中身はWD160EDGZ (WD160EDGZ-11B2DA0)だった。PC好きの備忘録さんの記事によれば、2021年初頭はWD160EDFZだったようなので、2021年のどこかでFからGに変わったのだろう。うちの個体は2021/7/18製造っぽい。製造から出荷まで結構時間がかかってるような感じがするけど、こんなもの?

HDD自体は何の変哲もない“白ラベル”で、特筆することはない。お決まりのCrystalDiskMarkとCrystalDiskInfoの結果を貼っておく。

------------------------------------------------------------------------------
CrystalDiskMark 8.0.4 x64 (C) 2007-2021 hiyohiyo
                                  Crystal Dew World: https://crystalmark.info/
------------------------------------------------------------------------------
* MB/s = 1,000,000 bytes/s [SATA/600 = 600,000,000 bytes/s]
* KB = 1000 bytes, KiB = 1024 bytes

[Read]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):   216.271 MB/s [    206.3 IOPS] < 38555.55 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):   215.477 MB/s [    205.5 IOPS] <  4862.16 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):     1.398 MB/s [    341.3 IOPS] < 91998.14 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):     1.318 MB/s [    321.8 IOPS] <  3103.91 us>

[Write]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):   216.307 MB/s [    206.3 IOPS] < 38573.18 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):   215.310 MB/s [    205.3 IOPS] <  4861.94 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):     4.309 MB/s [   1052.0 IOPS] < 30255.31 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):     4.164 MB/s [   1016.6 IOPS] <   982.39 us>

Profile: Default
   Test: 1 GiB (x5) [F: 0% (1/14902GiB)]
   Mode: [Admin]
   Time: Measure 5 sec / Interval 5 sec 
   Date: 2022/02/01 22:08:10
     OS: Windows 10 Professional [10.0 Build 19043] (x64)
Comment: WD Elements 16TB (WD160EDGZ)

一方で、USB接続時とSATA接続時で、なぜか総セクタ数が違うのは気になる所。

接続方法 セクタ数 USBとの差
USB 31251693568 -
SATA 31251759104 65536 (32MiB)

USB-SATA変換チップはJMS579で、恐らくこいつがHDDのセクタ数を実際よりも過少にOS側に報告してるのだろう。何かしら理由があって制限してるのか、チップの仕様なのかバグなのか……。GPTの場合、ディスクの終端にセカンダリGPTが配置されるため、あまり望ましい挙動とは言えないなぁ。まぁ、真っ当にUSB HDDとして使う分には問題ないし、SATAとUSBを行き来しなきゃいいだけですけども。

MyBookの変換基板はWD向けのカスタムファームで、WD, HGST以外のHDDを認識しないようになっているらしく、関係があるのかもしれない。

今回買ったHDDは10TB×5のRAID-Z2プールの置き換えに使うつもりで、現在絶賛リビルド中。実効26TiBのうち23.3TiB使用した状態でzpool replaceを行うと、resilveringに2日ちょいかかった。HDD台数的に既存vdevのreplaceを選んだが、これだけ時間がかかるなら思い切ってdRAIDに乗り換えても良かったのかもしれない。

  • start.txt
  • 最終更新: 2022-07-27 15:26
  • by Decomo